痴漢の冤罪事件を防止するための弁護士の役割
痴漢の冤罪事件は誰の身にも起こり得る
痴漢は男女問わず被害者になる可能性のある悪質な犯罪です。しかも恥ずかしさから被害を言い出せず、泣き寝入りしてしまう被害者も少なくありません。
しかしその一方で、満員電車の中など人が密集した環境で起きる痴漢は冤罪事件も多い犯罪でもあります。
その場合、「加害者」と名指しされた人物も被害者ということになります。痴漢は性犯罪でもあるため、やってもいない罪で疑いをかけられた本人の苦しみははかりしれません。あらぬ疑いをかけられて絶望した結果、自殺に追い込まれるという痛ましい事件も起きています。
冤罪事件の中でも「痴漢」はもっとも私たちの身にふりかかりやすいものといえるでしょう。
なぜ痴漢事件は冤罪が起きやすいのか
痴漢事件で冤罪が起きやすい理由としては、次のようなものが考えられます。
被害者の証言以外の証拠がないケースが多い
痴漢は満員電車のような人混みで、どさくさに紛れて行われることも多い犯罪です。その結果、被害者の証言しか証拠がなく、容疑をかけられた人に有利な証言をしてくれる目撃者もいないというケースも多々あります。
事件発生後の不適切な対応によって疑われてしまう
事件発生後に不適切な対応をしてしまった結果、周囲の人によけいに疑われてしまうということもあります。
たとえばその場を立ち去ろうとすると「逃げようとしている」と被害者や周りの人に思われるリスクが高くなります。また警察官に身分証明書の提示を求められたときも素直に応じるべきです。個人情報の提供をためらっていると、「逃亡のおそれがある」と疑われるからです。
また被害者と押し問答になってしまったときに被害者の衣服の繊維が手について、「痴漢行為があった」という証拠にされてしまうこともあります。
さらに反射的に謝ってしまったことが、「悪いことをしていないのなら謝るはずがない」として有罪である証拠として使われてしまうこともあります。
早く解放されたいあまりにウソの自白をしてしまう
痴漢の容疑で逮捕された場合、迷惑防止条例違反などの罪に問われることになります。しかし初犯、しかも悪質でない場合は執行猶予つきの罰金刑で済むことも多いため、トラブルを長引かせたくないという気持ちから、本当はやってもいない罪を認めてしまうというケースもあるようです。
また、取り調べで警察官に促されて供述調書にサインしてみたところ、それが実は「自分が痴漢行為をやりました」という内容になっていたということもありえます。
どんな形であれ、一度罪を認めてしまうと、あとから「実はやっていません」と主張するのは難しくなります。
冤罪であれば、一貫して無実を主張し続けることが大切です。供述調書にもサインしないように気をつけましょう。
痴漢冤罪を防ぐために弁護士ができること
冤罪で逮捕されてしまった場合、一貫して容疑を否認し続けることが大切です。逃げずに警察への捜査にはきちんと協力し、堂々とふるまいましょう。
最終的には被害者の証言とこちらの言い分とどちらが説得力があるのか、という話になってきますので、無実であるならば「自分は無実である」と主張するべきです。
ただ実際の問題として、「自分は明らかにやっていないのだが、状況が不利だ」ということもあるでしょう。また、ふだん刑事事件と縁のないような一般の市民が警察の取り調べに対して適切に対処するのは容易なことではありません。
だからこそ逮捕された段階で早めに弁護士に相談し、今後のアドバイスを求めることが大切です。
弁護士ができることには次のようなことがあります。
取り調べに対するアドバイス
一度罪を認めてしまうと後で撤回するのは難しいため、取り調べでは一貫して無実を主張することが大切です。
最近では痴漢冤罪が相次いでいる事態を受け、逮捕されても短期間で釈放されるケースも増えています。「自白しないと勾留されて、帰れない」とは限りませんので、よけいなことは言わない、供述調書にサインしないと毅然とした態度をとることが必要になります。
弁護士がいれば実際の取り調べを受ける前に、こうした取り調べについてのアドバイスをもらえます。この時点で相談できるのは弁護士しかいませんので、しっかりサポートしてもらいましょう。
その他弁護活動
痴漢冤罪事件では、被害者の方の思いこみや勘違いがきっかけで冤罪が生まれてしまうことがあります。
そのため弁護士としては「被害者の証言が信用できないものである」ということを主張し、冤罪事件であることを訴えることになります。
具体的には、再現実験で事件当時の状況を再現して当時の状況と被害者の証言の矛盾をつく、被害者の供述の変遷から矛盾を見つける、といった手法によって、被害者の証言の不合理性を指摘していきます。
冤罪だからこそ堂々と主張を
痴漢冤罪は都会にいる人なら誰もが巻き込まれる可能性のある事件です。しかし身に覚えがない罪の疑いをかけられているとはいえ、事件の後に間違った対応をしてしまうと周囲の人によけいに疑われてしまうリスクもあります。
冤罪であることをきちんと主張するためにも、痴漢冤罪に巻き込まれそうになったらまずは弁護士にご相談いただければと思います。